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「もてないのは理系の時点で諦めるべき問題だろ。ここを見ても解るとおり、理系の女子は圧倒的に数が少ない。恋したくても無理なんだよ」  千晴を指差しながら迅は悟ったような顔をした。ここに女子がいると指摘することもできるが、迅ならば千晴を口説こうなんて気持ちは一ミクロンも起こらない。つまり恋は成立しない。彼女を作って青春を謳歌するにはサッカー部や野球部といった王道をいくしかないのだ。 「まあ、恋は諦めてもらおう。それより、目立つ方法はないものか。こう今の若人の心をぐっと掴んで科学部に来たいと思うような何かだ。諸君、どういうものならば若人受けすると思う?」  お前はじじいかという突っ込みを全員が飲み込んで桜太の問いを考え始めた。たしかに現在はただただ変人の吹き溜まりなのだ。解決しておいて損はない。それに後輩たちから先輩と呼ばれたいとの下心もあった。  しかし理系が強いという触れ込みのある高校でこうも人気がないというのはどうしてだろうか。そんな学校で理系クラスに所属している彼らだって変人予備軍のはずだ。 「あっ。目立って若者受けするものがあるぞ」  ぱちんと指を鳴らしたのは優我だ。 「何だ?」  とにかく案が欲しい桜太が飛びついた。 「昨日ドラマの再放送っていうのを見ててさ、あれの学校版なんていいんじゃないかな。見たことあるか?主人公の物理学者が怪異現象を科学で解明するってやつ」 「おおっ」  怪異現象を科学で解明。何ともかっこいい響きだ。それならばたしかに科学部の活動としてもおかしくない。桜太はにんまりした。 「それってあれだろ。何か映画にもなったやつだ」 「なぜか物理学者なのに白衣を着てたよな」  しかし肝心のドラマの内容を覚えていないメンバーだった。桜太も楓翔も迅まで天井を睨んで思い出そうと努力するも思いつかない。CMなんかで見てアウトラインだけ知っている状態だった。
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