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「七不思議か。そうなるとその不思議を見つけるところからだな。何らかの噂なり困っていることを拾ってくる。これを夏休みまでの三日間でこなすっていうのでどうだ?」
桜太が部長として提案した。すると全員から拍手で賛同を得られた。
「それなら、顧問の松崎先生の許可も貰っておこうぜ。夏休みにここを使う許可を貰っておかないと。それにいざとなれば夜の学校に侵入することになるしさ」
のりのりになってきた楓翔が提案する。なぜか夜に侵入というところに燃えていた。
「よし。それでは松崎先生の許可を頂きに参ろう」
こうして桜太の号令でぞろぞろと化学教室から職員室に向かうこととなった。職員室は当然のように日当たりのいい南館にあるので離れている。
「なんか空気が違うよな」
南館の二階に通じる渡り廊下を通っている時に迅が呟いた。
「そうだよな。じめっとはしてない」
横を歩く優我も同意する。どうして南北に建物を並べて建てたのだろうか。おかげで北館は日当たりがさらに悪くなっている。
二階の真ん中にある職員室に着くと、まず桜太が松崎を呼びに中に入った。五人で押し掛けては邪魔なので廊下で話したほうがいい。
顧問のフルネームは松崎香奈枝という。女性ながら地学を担当しているのだ。その彼女が鉱石を愛していると聞いても誰も驚かないだろう。要するに、変人の監督は変人なのだ。29歳だがもちろん彼氏なしだ。
「どうした?科学部が揃いも揃って」
桜太に呼ばれて出てきた松崎はさばさばとした性格そのままの調子で訊く。
「先生。火急に相談したい儀があるんです」
桜太がまだ時代がかった言い方を続けて切り出す。
「ほう。火急を要することか。まあ聞くだけ聞こう。申してみよ」
さすがは顧問。変な生徒の相手に慣れている。同じように時代がかった言い方になって訊いた。
「実は来年の新入生獲得に向けて部活動を真面目に取り組もうと。そこで手始めに学園七不思議を解明したいんです」
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