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「君の摂食障害は普通の内科では治せない。君を救えるとしたら心療内科なのかもしれない。何か人に言えない悩みを抱えてないかい?」
リクは、自分に静かに話しかけてくる医師を、無言で見つめた。
何を言うべきなのか、分からなかった。
ただ、自分を救えるのがそんな名前の内科でないことは分かる。
「いえ、……僕は何も」
「診察時間外に電話しておいで」
「え?」
リクがまだ少しトロンとした気だるそうな瞳を向けると、荻原は穏やかに言った。
「私は以前、総合病院の心療内科にいたんだ。話くらい聞いてあげられるかもしれない。君が望むなら、他の心療内科を紹介してあげてもいい」
「……」
「まあ、どちらにしても、またここに治療に来ること。まずは内科的治療をしよう。いいね。またぶっ倒れたくなかったら必ず来なさい」
穏やかだが、逆らえない威圧感のある口調だった。
リクは取りあえず、治療に通う事には「はい」と答えた。
とにかく、一人で居る時にまた倒れて意識を失うことだけは避けたかった。
自分の意識が途切れる時間。
それが今のリクには、一番怖かった。
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