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 その日も、いつもみたいに賢くないクラスメイトから逃げていた。徐々に賢くないクラスメイトの姿が遠のき、玲子は上手く逃げ切ったと安心して気を緩める。しかし、運悪く靴紐がほどけてしまい、それが自分自身の足を絡ませ、廊下で派手に転ぶ。 「やっと、捕まえた」  賢くないクラスメイトは今日三人いる。そして、またまた運が悪い。クラスで一番の力持ちの上田(ウエダ)くんがその中にいた。 力では到底かなわないと、今日は仕方がなく捕まることにした。  この頃の、嫌がらせはレベルアップを遂げ、精神攻撃から物理攻撃に変わった。もちろん、外見ではわかりづらい部位を殴ったり、蹴ったりするのでぱっと見ではわからない。だから、玲子は誰にもこの事実を言えなかった。もし、仮に言ったとしても、化け物の戯言として処理されるのだから、言っても言わなくても変わらない。  捕まったら決まって、学校の屋上に連れて行かれる。そこは、普段誰も来ないから嫌がらせをするには絶好の穴場なのだろう。  力持ちの上田くんが玲子の体を押さえつけ、それ以外の二人の賢くないクラスメイトが玲子の体を痛めつける。 いつもなら、痛い、苦しいと思いながらも歯を食いしばって耐えるのだが、今日は少しばかり耐え切れなかった。少し上田くんの力が緩んだ瞬間、玲子はありったけの力を込めて押した。 そこまでは、よかったのだ。  しかし、またまた運が悪かった。玲子が押した瞬間に、体を吹き飛ばすような強い風と、屋上の柵があれほどまで脆いとは知らなかった。不運が不運を重ね、上田くんは屋上から姿を消した。  上田くんの断末魔のような奇声が聞こえたかと思うと、ドスという鈍い音が響き渡った。  不思議と玲子は冷静だった。静かに体を起こし、賢くないクラスメイト二人の手と足を自分の体からどけて、立ち上がった。 賢くないクラスメイトはあまりの出来事に驚き、走って屋上から姿を消す。 下の方からは、ザワザワとする雰囲気が漂い、それが怜子の心に不快感を与える。
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