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そして、屋上のドアがまた誰かの手によって動かされる。何とも耳を塞ぎたくなるような不快なギィーという音の後に、暗闇から見えた姿はクラスメイトの慎二だった。
さっきまで聞こえていたザワザワするものは一瞬として消えた。それと同時に、慎二がどうしてこんなところにいるのかという疑問が生まれる。
いつもと何ら変わらない物静かな雰囲気で、慎二はこう言った。
「君はペルソナという言葉を知っているかい?」
また、わからない言葉が一つ増えた。
玲子は顔を斜めに傾ける。
「やっぱり、知らないのか」という言葉が耳に触れたと感じた瞬間、再び慎二は怜子の耳元で「教えてやるよ」と優しく言った。
そして、慎二は高らかに笑った。何か面白いことでもしたのだろうかと少し考えるが、玲子にはよく分からなかった。
慎二の様子がおかしいことに玲子は戸惑いを隠せない。まるで、化け物にでも取り憑かれたのかと疑うほど、変わり果てた雰囲気。
「そんなに驚かなくてもいいだろう? 君だってこうなるだよ、無意識なとき。まあ、僕の場合は、いつもつけている優等生という仮面を外しただけなのだがね」
玲子には慎二の言っていることがまるで分からない。確かに日本語で話しているのに、英語で話されている気分だ。
「仮面って、慎二くん何も持っていないじゃん!」
至極当然の疑問を慎二にぶつける。
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