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「――発達障害ですね」 医者は冷淡な目で言い放った。 玲子(レイコ)には、その言葉の意味がよく分からなかった。  医者の後ろの窓から溢れる光がスポットライトのように玲子たちを照らす。あまりの眩しさに、玲子は後ろを向く。 「お母さん……?」 弱々しく発せれた言葉は玲子の母親の耳に届いていなかった。母親は目を見開き、ただ呆然と眩しいであろう光を見つめ、固まっている。 それで、やっと気づいた。 今、告げられてことが玲子にとってどれほど重大なことか、ということに。 やっぱり、私は――化け物なのかしら?  事の発端は今から三年前のことだ。 あの日は、三十度を超える真夏日だった。 「玲子。もう、二年生なんだから、いい子にしているのよ。じゃあ行ってくるわね」  両親ともに働いているため、夏休みという行事はあまり好きではなかった。玲子は友人関係を築くのも得意ではなかったため、いつも一人ぼっちである。だから、遊ぶ人などもいなくて、家で静かに過ごすくらいしかない。  玄関のドアが閉まるバタンという音を聞いて、玲子は自分の身長を遥かに越える模造紙を床に広げる。夏休みも残り少なくなってきたため、母親にそろそろ自由研究の課題をやりなさいと言われたから、今なんとなく模造紙を広げている。半袖の袖を肩までまくり、何となく天井を見上げながら、ウーと唸る。
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