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この日、玲子の記憶はここで途絶えた。次に気づいたときには、見覚えのない真っ白な天井があり、ツーンと鼻につく消毒液の匂いが広がっている場所だった。左腕には点滴の針が刺さっており、頭の奥が鈍く痛み、重い。
「ここがどこかわかるかい?」
母親の優しい言葉がする方を向く。
「どこ、ここ?」
少し声が出しづらく、喉も唇も乾いていることに気づく。母親は玲子の頭を撫でながら、ここは病院よと答える。
しかし、それ以上のことは話してくれなくて、両親とも「玲子は疲れていたんだな」としか言ってくれなかった。
そして昨日、ずっと閉ざされていたパンドラの箱を開けるように、両親は玲子にあの日あったことを話した。今の玲子の状態を考えれば、両親はこの話を話さなければならなかったのだろう。
笑い話で行われるだろうと思っていた家族会議は、あまりにも玲子の心を苦しくさせた。
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