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分かっただろう――? お前は人間ではないんだ。  いや、ここは素直に喜ぶべきことだろうと玲子は首を傾げる。確かに、自分自身を疑うほどの出来だが、何故そこまで否定されないといけないのか、よく分からなかった。 しかし、次の父親の言葉で玲子は全てを理解する。 この絵をあの日、つまり――俺と母さんが仕事に行ってから、帰ってくるまでに書き上げたんだ。そして、お前は死んだように絵の前で倒れていた。この意味が、もうお前なら分かるだろう?  母親の持っている模造紙が震え、大きな音を立てる。  玲子は、父親の言葉の意味をすぐに理解した。正座だった足を崩し、座り直す。  また、いやまたではない、その頃から自分の異常は始まっていたのだ。玲子が指す異常とは、集中力のことである。自覚し始めた、いや、自覚させられたのはつい最近のことである。  何気なく、気になったことに没頭していたら、平気で五、六時間過ぎる。誰かに、やめなさいと言われない限り、没頭していることをやめない。そのことによって、様々なことに支障をきたしていた。このことは、両親からも毎回キツく注意を受けていることだ。  その集中力は歳を重ねれば治るだろうと思っていたけれど、この頃ますますひどくなる一方だった。両頭もその状況に酷く頭を悩ましていた。
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