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 医師に「発達障害」だと告げられてから、数日が経った。  玲子の異常が明確に告げられたと、母親が父親に伝えると父親は酷く怒り狂い、怒鳴り散らした。それはもちろん出来損ないの娘に向けられた刃(ヤイバ)である。それ以来両親は、嵐のような喧嘩を毎日している。  玲子は未だに、発達障害という言葉がどんな意味なのかよく分からない。でも、それはしょうがないのかもしれない。だって、玲子は化け物で少しも賢くない出来損ないの子なのだから。  両親が喧嘩しているときは、「自分は無関係です」というような澄ました顔で絵を描く。そうしていなければ、玲子の中にいる化け物が両親に牙を向いてしまう。それだけは避けなければならない。 だって、正直者のいい子は嫌われるのですから。  これは、学校でも同じことが言える。  クラスメイトたちはどうしてか、玲子が発達障害であることを知っている。おそらく、マヤ先生が気を利かせて言ったようだが、逆効果だ。  「発達障害」という言葉が病原菌にでも変化したのかと疑うくらい、病気だとか汚いとか逃げろだとかが言葉の刃として玲子に向けられた。でも、そんな光景を目の前にして玲子は少し安心する。自分よりも賢くない人がいるということに胸を撫で下ろすのだ。  玲子は、クラスメイトより少し賢いので何も言い返さない。もし、言い返してしまえば火に油を注ぐという言葉のとおり、火事になってしまう。 正直者のいい子はみんなから嫌われてしまうのでお口チャック。
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