第14章【残虐なる正義・静謐なる旋律】

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当たり前の様子に安心してから、私は少し奥に干してあったおじさんのズボンに手を掛ける。 バサッ……バサッ……!! 「ッ?!」 静けさを打ち破るように、遠くの方から何かが羽ばたく音が聞こえてきた。 ……ううん、正確には、“何か”じゃない。 「サウザー……?」 何度も聞いたことのある、耳馴れたその羽ばたきは、間違いない。 サウザーの翼の音だ。 「サウザー!」 私は霧の中に誰かが潜んでいるかも知れないことを忘れて、羽ばたきの聞こえた方角へと向かって大声をあげた。 耳のいいサウザーなら、私の声くらい簡単に聞こえるはず。 ……けれど、いつまで待ってもサウザーが姿を現すことはなかった。 「霧のせいかな……」 さっきよりも更に濃さを増したような気がする目の前の霧をじっと見つめる。 家の明かりがあるお陰でこの辺は白っぽく見えるけれど、家から少しでも離れれば、辺りは真っ暗な闇に包まれているだろう。
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