第14章【残虐なる正義・静謐なる旋律】

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サウザーは耳もいいし鼻も利くけれど、魔法の霧がここまでの道のりを邪魔しているのかもしれない。 だとすれば、久しぶりに来てくれたのに、会えないことになる。 「サウザー!」 いつの間にか固く抱き締めていた着替えを、テラスの窓を開けて建物の中に投げ入れると、私はざわついた心をなるべく落ち着かせながら、玄関の扉脇に掛けてあったランタンを手に取った。 サウザーが明かりを見つけてくれれば、それだけ早く会うことができる。 サウザーが近くまで来ている。 それだけで怖さはどこかへ吹き飛んでしまった。 サウザーの翼の音が聞こえた方向は、ここから見て、村とは逆の方角だ。 どっちでもいい。 サウザーが会いに来てくれるなら。 私はランタンを顔の横に掲げながら、霧の森の中を足早に歩き出した。 本当は小走りで行きたいんだけれど、ランタンが傾いて壊れたり、中のアルコールが溢れて火事になったら大変だ。 走らないように、でも、なるべく急いで。
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