第14章【残虐なる正義・静謐なる旋律】

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晴れていれば何度も登ったことのある丘。 けれども、今こうして恐る恐る歩いているこのなだらかな斜面は、どれだけキツい丘陵よりも、遥かに登り辛いもののように思えた。 「はぁ……はぁ……」 胸がきつく締まっているみたいに、あっという間に息が切れてしまう。 サウザーと2人でこの丘を走り抜けて、背の高いリンゴの木に登って。 アップルパイを作ってあげたら、ものすごく喜んでたっけ。 「サウザー……」 あと少しでリンゴの木が見えてくるはず。 顎から喉を伝って落ちた汗の軌道を拭って、私は顔をあげた。 「……?」 リンゴの木の幹の辺り。 そこに何か……いや、誰かが立っている。 大きさから見ても、サウザーじゃない。 もっと小さな……私よりは大きな人影。 私の知っているヒューゴおじさんじゃない。 近くの村の人達も、私達が住んでいる場所は分からないはずだ。 そもそもヒューゴおじさんが作ったケッカイは、私とヒューゴおじさんしか通れないはずで……
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