第14章【残虐なる正義・静謐なる旋律】

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「!」 私の姿に気が付いて、その人が私の方を向いた。 胸が……跳ねる。 見たこともない、それどころか、暗くてよく見えないはずなのに、とても懐かしい気持ちになった。 ヒューゴおじさんよりも背が高くて、だいぶ若い。 知らない人に会ったら逃げなきゃいけないのに、なぜか私は逃げられなかった。 「……だれ」 勇気を出して、男の人に喋り掛ける。 男の人は、私を見下ろして小さく笑うと、顔の辺りまであげていた腕を下ろした。 見ると、その手には赤いリンゴを持っている。 「あ!」 考えるよりも先に、足が動いていた。 長い草を掻き分けて男の人の元に近寄ると、持っていたリンゴを取り返そうとして、手を伸ばす。 「返して!サウザーのリンゴ!」 男の人はちょっとだけ驚いたような顔をした。 でも、リンゴは返してくれない。 それどころか、私がリンゴを取れないように、わざと右手を頭の上に掲げる。 「ダメ!返して!」 リンゴ目指して飛び跳ねてみる。 ……けれど、結局リンゴは男の人の手の中だ。
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