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「!」
私の姿に気が付いて、その人が私の方を向いた。
胸が……跳ねる。
見たこともない、それどころか、暗くてよく見えないはずなのに、とても懐かしい気持ちになった。
ヒューゴおじさんよりも背が高くて、だいぶ若い。
知らない人に会ったら逃げなきゃいけないのに、なぜか私は逃げられなかった。
「……だれ」
勇気を出して、男の人に喋り掛ける。
男の人は、私を見下ろして小さく笑うと、顔の辺りまであげていた腕を下ろした。
見ると、その手には赤いリンゴを持っている。
「あ!」
考えるよりも先に、足が動いていた。
長い草を掻き分けて男の人の元に近寄ると、持っていたリンゴを取り返そうとして、手を伸ばす。
「返して!サウザーのリンゴ!」
男の人はちょっとだけ驚いたような顔をした。
でも、リンゴは返してくれない。
それどころか、私がリンゴを取れないように、わざと右手を頭の上に掲げる。
「ダメ!返して!」
リンゴ目指して飛び跳ねてみる。
……けれど、結局リンゴは男の人の手の中だ。
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