第14章【残虐なる正義・静謐なる旋律】

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やっぱり2人がしている話は難しすぎて、私は途中から話を聞くのを諦めた。 「どうだ……ついてきてくれないか」 難しい話のあとで、背の高い男の人は、もう一度私に手を差し出す。 ケッカイの外に出て、多分、散歩か何かをするつもりなんだろう。 どうして私まで誘うのかは分からないけれど、それは多分、私がこの森に詳しいからだ。 外に出るのは……怖い。 時々ケッカイの外に出て、話をしてもいいって言われている何人かの村の人達と会ったりはしているけれど、それは年に数回だけだ。 あとは大抵ケッカイの中にいて、ヒューゴおじさんのお手伝いをしている。 それでも、塔の中にいた頃と比べたら、私は自由だ。 霧が出ている時以外なら、好きな時に外にも出られるし、家の回りを少し歩けば、美味しい木の実なんかもなっている。 わざわざケッカイの外にある、魔物だらけの怖い世界になんか、出たくない。 …………出たくなんか。
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