第14章【残虐なる正義・静謐なる旋律】

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「そんなぁ……」 驚いた様子の男の人を無視するように背を向けると、背が高い方の男の人は、さっきと同じように、私に手を差し出した。 「あっ!」 動けないでいた私の手を取ると、私の家に向かって歩き出す。 男の人と手を繋いだことのなかった私は、緊張で顔が熱くなってしまう。 「まっっ、待ってくださいよぉ!」 私たちの後を追うように、男の人が駆けてきた。 また留めるつもりなのかと思ったけれど、その人はもう何かを言うこともなく、私たちのすぐ後ろをついてくるみたいだった。 家に戻っても、やっぱりおじさんは帰ってきていなかった。 ふたりを玄関先に残して、2階にある部屋に駈けあがる。 クローゼットから、革のショルダーバッグを引っ張り出して、中に薬草なんかを詰め込んだ。 「なにが要るかな……」 見ず知らずの人だし、ケッカイの外に出るなんておじさんに言ったら絶対に怒っちゃうだろう。 ……けれど、なんでだろう。 あの背の高い男の人と話をしていると、私も一緒に外に出掛けてみたくなってしまう。 ワクワクする。 「ちょっとだけ……散歩するだけだし」 おじさんにバレた時の言い訳なんかを考えながら、私の口許は自然と弛んでしまう。
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