第14章【残虐なる正義・静謐なる旋律】

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初めて、おじさん以外の人と親しくなったからなのかもしれない。 手を繋いだのだって、まだドキドキしてる。 温かくて、大きくて。 「…………うぅ、なんだろ」 やっぱり、胸の辺りが落ち着かない。 こんなこと、これまで1度も無かった。 頬どころか、目元まで熱く火照ってしまった。もしかしたら、あの人に変な風邪を移されたのかも。 「えぇと……ハンカチと、それから風邪薬あるかな」 「まだやっているのか」 「ひゃっ?!」 振り返ると、あの人が開いた扉から中を覗いていた。 なんだか恥ずかしくなってしまって、クローゼットから出してベッドに並べていた物を慌てて戻す。 「まっ、待って!見ないで!」 どうせすぐに戻ってくるんだと思い直し、バッグの中に入れようとしていたタオルなんかをその場に残すと、代わりに、ベッドの隣に座らせていたサウザーの人形を掴んだ。 サウザーの人形は大きすぎたらしく、ぎゅうぎゅうに押し込んだバッグの隙間から、未練がましく頭だけ覗かせている。
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