第14章【残虐なる正義・静謐なる旋律】

26/45
前へ
/284ページ
次へ
ガラス瓶が擦れるような音だから、薬草水か聖水が入ってるんだろう。 背の低い男の人が先頭に立って、私はその後ろ、最後に背の高い男の人が立った。 「チェルシー、いいですか、絶対に僕達から離れないでくださいね……ったく、言い出したら聞かないんだから……」 カンテラを掲げ、先に歩き始めた男の人が私に釘を刺す。 最初はほんのちょっとだけ不安だったけど、こっちの男の人も案外頼りになるのかも。 「う、うん!」 「……それにしてもちっちゃいなぁ……えへへ、何か出てきたら、僕の後ろに隠れててくださいよ。危ないことは禁物ですからね」 頷くと、前を行く男の人は私を見てにっこり笑ってくれた。 私が一緒についてくるのに反対しているんだと思っていたけれど、いざ行くことになったら、私を心配してくれているみたい。 「ありがとう」 素直にお礼を言うと、男の人は更に気を良くしたみたいだった。 「へ、へへ……なんならリュードお兄ちゃんって呼んでもらってもいいですから」 「誰が呼ぶか」 私が返事をする前に、背後から鋭い拒否の声。 「リュード……お兄ちゃん」 お兄ちゃんなんて初めて使う言葉だ。 前を歩く背中に向かって呼び掛けてみると、リュードお兄ちゃんは、これまでで最高の笑顔を私に向けた。 「…………うへへ……」 「貴様、そのだらしなく伸びた鼻の下を適度な長さに切り刻んでやろうか」 再び、背後から恐ろしい声が聞こえる。
/284ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加