第14章【残虐なる正義・静謐なる旋律】

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その足音はゆっくりとした早さで、けれどどこかに逸れることもなく、まっすぐに私達がいるこの場所へと向かっていた。 「やはり来たか……離れるな」 後ろにいた男の人はそう言うと、壁を作るかのように、私の前に立ち塞がった。 こうして目の前に立たれると、背の高さがはっきりと分かる。 「……ぁ、」 男の人に背中を向けられた私は、これまで何度か嗅いだことのある匂いを嗅ぎとって、思わず声を漏らした。 …………血の匂いだ。 獣を捌いた時のような、鼻につく嫌な匂い。 それと同じ匂いが、目の前にいる男の人から漂っている。 男の人が身に付けているマント。 闇のせいで、ずっと黒いマントだと思っていたけれど、違う。 「……血、なの?」 無意識にそう呟くと、弾かれたように、男の人が振り返った。 マントだけじゃない。 この人の身体中から、血の匂いがする。 「………」 傷つけられたみたいな。 それとも、隠し事がバレたみたいな。 そんな、今にも泣きそうな顔をして、私を見下ろしている。
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