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「あの、」
そう声を掛けたのはリュードお兄ちゃんだった。
それと同時に、草むらから誰かが顔を覗かせる。
「…………わっ、」
少し間を置いて、再びリュードお兄ちゃんが驚いたような声。
私は血で濡れたマントから目を離すと、霧の中から現れた人に目を向けた。
驚くのも無理はない。
そこに立っていたのは、金色の髪の毛をなびかせた女の人だった。
村の人が着るような小花柄の黄色いワンピースを着て、白いエプロンをその上から身に付けている。
持っている大きな麻の籠が重そうに揺れていた。
「あのっ……」
女の人は私たちの顔を順に見てから、先頭に立つリュードお兄ちゃんに向き直った。
良く見ると、リュードお兄ちゃんは女の人の胸元に釘付けだ。籠を両手で前に持っているから、女の人の胸元が余計大きく見える。
「あの、旅のお方でしょうか……ここは常夜の森のどの辺りなのでしょうか?」
女の人は、小さな鈴がちりちりと鳴るような優しげな声で言った。リュードお兄ちゃんは、さっきからずっとボーッとしっ放しだ。
「へっ?!」
ボーッとしていたリュードお兄ちゃんは、ようやく我に帰って、慌てて首を振る。
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