第14章【残虐なる正義・静謐なる旋律】

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サウザーは、ヒューゴおじさんが連れてきた、緑色の不思議なトカゲだ。 最初に私達が出会ったのは、サウザーが、まだ緑色の卵の時だった。 暖かくしてれば孵化するって教わって、私が布団として使ってた毛布に卵を大切にくるんで、毎日だっこして眠った。 サウなんとかっていう珍しいトカゲだっておじさんが言ってたから、私がサウザーっていう名前をつけた。 大好きなサウザー。 サウザーが生まれてからは、毎日が本当に楽しかった。 サウザーは頭がよくて、すぐに私達の言葉が分かるようになった。 私の方が、物覚えが悪くて困っちゃうくらい。 私は時々、昔起こったことなんかを思い出せなくなっちゃうことがあるけど、おじさんが、「それは本が護ってくれてるから。チェルシーのためなんだよ」って言ってた。 ヒューゴおじさんが言ったことの意味はよく分からなかったけれど、とにかく私がしょっちゅう物忘れしちゃうのは、仕方がないことなんだって。 ある日、 その話を聞いて勘違いしたサウザーが、沢山の本を持ってきた。 サウザーは、「チェルシーを護る」って言って、毎日毎日本ばっかり読んでた。 泣き虫なサウザー。 小さくて、弱くて、優しいサウザー。 サウザーはどんどん言葉を覚えていった。 どんどん強くなって、どんどん大きくなった。 「チェルシーを護る」 って言って、沢山の魔法を覚えた。 ある日、 ヒューゴおじさんが、言った。 「サウザーは大きくなりすぎた。ここに居たら、見つかってしまう」 誰に見つかるのか、見つかったらどうなっちゃうのか。 それは教えてくれなかったけど、とにかく怖い人達が来るんだって、ヒューゴおじさんが私に説明してくれた。
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