第14章【残虐なる正義・静謐なる旋律】

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女の人は、優しげな口許を持ち上げてくすりと小さく笑う。 絹糸みたいな黄金色の長い髪の毛も、まるで笑っているかのようにふわりと広がった。 「……はぁ」 リュードお兄ちゃんが、私の横で大きな溜め息をついた。 ぼんやりとした顔で女の人を見つめている。 「森を抜けて、どこに行くつもりだったんですか?」 「えっ……」 リュードお兄ちゃんの問い掛けに、女の人は一瞬だけ固まった。 けれどすぐまたさっきみたいな笑顔を浮かべて、軽く肩をすくめる。 「……村よ。村に帰るところ」 「ああ、リバーサイドですか。あそこに住んでるんですか?」 「ええそうなの」 「今度遊びに行ってもいいですか?」 「えっ……ええ」 「ほんとですか?!じゃあさっさと行きましょう!」 へらへらと笑うと、リュードお兄ちゃんは先頭に立って歩き出した。 さっきまでとは違って、なんだか生き生きしてる気がする。 「……ち、まあいい」 私の後ろから小さな舌打ちと、なにかを呟く声が聞こえた。
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