第14章【残虐なる正義・静謐なる旋律】

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「あの……っ」 「あなた達は、これからどこへ行くつもりだったの……?」 名前を聞こうとした私の小さな声を、女の人が遮って言った。 「いやあ、あなたの行くところと同じですよぉ!」 「……こんな小さな女の子と一緒だなんて、道中大変だったでしょう?」 「そんなことありませんよ!僕、強いですから!」 リュードお兄ちゃんは、機嫌が良さそうに女の人に喋りかけている。 女の人の目線が、私に向けられた。 冷たい目。 「ッ!?」 私を見下ろしているから、目が細められたんだ。 ……なんて言い訳できないくらい、それどころか、恨みを込めているような、そんな視線が私を射抜く。 「…………ふぅん」 突然喉がからからになって、私は唾を飲み込んだ。 それすらも許されないことのように、女の人は私を睨んで。 「……強い殿方と一緒で、本当に良かったわね」 しばらくして、女の人は言うと、何事もなかったかのように私に笑みを向けた。
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