第14章【残虐なる正義・静謐なる旋律】

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「静かにしろ」 耳元で聞こえてきたのは、背の高い方の男の人の声だった。 いつの間にか私の背後に立っていたらしい。 「こっちだ」 短く言うと、男の人は私の手を掴んで歩き出す。 辺りは真っ暗闇なのに、どこに何かあるのか知っているかのように、歩き方には躊躇いがない。 私は頷くと、手を引かれるままに歩き始めた。 攻撃の音は止んだけれど、またどこから攻撃を受けるかは分からない。 自分の息なのに、それすらうるさく感じる。 さっきまで、ミラの冷たい手に握られていた私の手は、今はこの男の人に優しく握られていて。 心臓の音も、やっぱりうるさい。
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