第14章【残虐なる正義・静謐なる旋律】

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視界の利かない闇の中を探るよりも、この人に道案内をお願いした方がきっとうまくいく。 そう直感した私は、おしりの辺りまで伸び放題の草に足をとられないように、ってことだけ気を付けながら、森の中を歩き続けた。 誰かが近付いてくるなら草を踏む音が聞こえてもいいはずだけれど、耳に入ってくるのは私達2人の呼吸の音と、ザクザクと草を踏む音。 「あれ……リュードお兄ちゃん達は?」 こっちだと言われたから、皆で逃げてきたのだと思ってたけれど。 そういえば、2人が近くを歩いている気配はない。 「……案ずるな、死にはしない」 少し間があってから、そう聞こえてきた。 それって、この人が敵を倒したっていう意味なんだろうか。それとも、リュードお兄ちゃんが強いという意味なんだろうか。 私がその言葉の意味を訊ねようか考えているうちに、辺りを包む霧が晴れていった。 ぎゅうぎゅうと生えていた木々を抜け。 見ると、行く先は崖になっている。
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