第14章【残虐なる正義・静謐なる旋律】

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サウザーは安全な所に引っ越して、私達も、その暗くて、狭い部屋から逃げ出した。 私達がやって来たのは、星が降る夜の森。 「ごめんな」 おじさんはそう言って頭を下げたけれど、太陽が上らなくたって、空を埋め尽くす星が輝いて眩しいくらいのその森を、私はすぐに大好きになった。 時々、誰かが迷いこんできて、仕方なく姿を隠す時は、森は深い霧で覆われちゃうけれど、普段は星がとってもきれいで、時々、月の周りには虹がかかった。 サウザーも時々遊びに来て、家の裏にある丘のてっぺんのリンゴの木で遊んだりした。 サウザーはリンゴが大好きで、私の手の届かない所にあるリンゴを取ってくれて。 サウザーに寝そべって、甘いリンゴを一緒にシャリシャリかじるのが、とても好きだった。 サウザーが最後に遊びに来たのは、何ヵ月くらい前のことだったっけ。 おじさんは、私の誕生日に、アップルパイの作り方が乗ってる本を買ってきてくれた。 何回目かの失敗の後で、やっとサウザーが「おいしい」って言ってくれたアップルパイ。 あの後、何回も練習して、アップルパイだけは上手に作れるようになったのに、いつまで経っても、サウザーは来てくれない。
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