第14章【残虐なる正義・静謐なる旋律】

42/45
前へ
/284ページ
次へ
「…………ぅ」 森を出たい。 たったそれだけのことを、今まで言い出せなかった。 ……なのに。 この人は、こうしてさも簡単なことのように、私を森の外へ連れ出そうとしている。 目の前にいるのは、これまで1度も会ったことの無い、村の外から来た男の人だ。 この人がどんな人かなんて分かるはずもない。でも、ヒューゴおじさんが言うみたいに、村の外から来た人達はみんな悪い人……のはずだ。 だからきっと、この人も悪い人…… 「頼む」 膝をつき、男の人は私を見上げる。 私は、目を逸らせない。 「わ、わたし……」 言い掛け、一瞬だけ視線を空に泳がせ。 再び顔を向けると、そこに彼はいなかった。 「え……」 掴まれていた手の温もりが消え、視界に捉えたのは、彼が身に付けていたマントの端が、崖の下に向かって落ちていく所。
/284ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加