第14章【残虐なる正義・静謐なる旋律】

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ミラはあの時、“攻撃された”……そう言った。 私はただ、“落ちた”と言っただけなのに。 ミラはあの人が攻撃を受けて、崖から落ちた事を知っている。 ううん、それどころか、ミラがあの人を…… ……でも、それを知った所でどうしたらいいの? ミラは弓を持っている。 リュードお兄ちゃんに本当の事を言ったら、今度はリュードお兄ちゃんが殺されてしまう。 私は攻撃魔法を使えない。 使えるのは、へたくそな回復魔法だけ。 ミラと戦う事になったら絶対に勝てない。 唯一、勝ち目があるとすれば…… 「そう、だね。大丈夫……」 素直に従う振りをして、私は精一杯の作り笑いを浮かべた。 まだ私達を殺すつもりがないのなら、どうにかしてミラにバレないように、リュードお兄ちゃんにミラの正体を話すしかない。 でも…… 「ね、早く行こう!」 ミラの手を目一杯振りほどくと、私はリュードお兄ちゃんの腕にしがみついた。左腕はミラが掴んでいるから、私はリュードお兄ちゃんの右腕を取る。 「へへ……なんか照れますねェ」 リュードお兄ちゃんはでれでれとした笑顔を浮かべているけれど、正直、私は気が気じゃなかった。
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