3人が本棚に入れています
本棚に追加
海水を飲んだせいだろう。その名を呼んだ途端、口の中に塩辛さが広がる。
顔をしかめる俺を見、クリムソンはどうやら勘違いしたらしかった。
「別に、一緒に動こうなんて言ってなかったろ。そんな顔すんなっての」
薪に背を向けているため表情は窺えなかったが、クリムソンは声を殺して笑っているらしかった。
小さく震える肩越しに何かが動き、俺は初めて、ここにいるのが俺達2人だけではない事に気が付く。
「……それに、オレにもやりたいことがあるんだよね」
俺がその存在に気が付いたと悟ったクリムソンが、慌てて付け加えて言った。
「どーせ、アンタの方も好き勝手にやるつもりだったんだろ?」
「……誰だ」
「それ、訊いてんの?それとも、確かめてんの?」
表情こそ変わらなかったが、クリムソンの周囲を纏う空気が冷たくなった。
こいつが俺から何かを“守ろう”とするなんて、滅多にない。
だが、今のこいつは、焚き火の前に腰を下ろすその男を、俺から隔離しようとしていた。
…………やはり、あそこにいるのは……
「リーガル」
その名を呼ぶと、クリムソンの奥にいたそいつが動きを止めた。
最初のコメントを投稿しよう!