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海水を飲んだせいだろう。その名を呼んだ途端、口の中に塩辛さが広がる。 顔をしかめる俺を見、クリムソンはどうやら勘違いしたらしかった。 「別に、一緒に動こうなんて言ってなかったろ。そんな顔すんなっての」 薪に背を向けているため表情は窺えなかったが、クリムソンは声を殺して笑っているらしかった。 小さく震える肩越しに何かが動き、俺は初めて、ここにいるのが俺達2人だけではない事に気が付く。 「……それに、オレにもやりたいことがあるんだよね」 俺がその存在に気が付いたと悟ったクリムソンが、慌てて付け加えて言った。 「どーせ、アンタの方も好き勝手にやるつもりだったんだろ?」 「……誰だ」 「それ、訊いてんの?それとも、確かめてんの?」 表情こそ変わらなかったが、クリムソンの周囲を纏う空気が冷たくなった。 こいつが俺から何かを“守ろう”とするなんて、滅多にない。 だが、今のこいつは、焚き火の前に腰を下ろすその男を、俺から隔離しようとしていた。 …………やはり、あそこにいるのは…… 「リーガル」 その名を呼ぶと、クリムソンの奥にいたそいつが動きを止めた。
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