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「おい、貴様」
「はっはい?!」
改めて呼び直すと、ようやくそいつが返事をする。
「来い」
「…………はああぁ」
わざとらしく大きな溜め息をつくクリムソンを無視して、俺は、慌てた様子で駆け寄ってくるそいつを凝視した。
小さい。
ここは過去なのだから無理もないが、背丈は“現在”のチェルシーよりも低い。
更に、男であるのが信じられない程痩せていて、筋肉もなく。
オドオドした様子の八の字眉毛を隠そうともせずに、リーガルは黒い眼差しで俺を見つめていた。
「ぼっ、僕に何か…ご用でしょうか?」
胸くそ悪い敬語で話す様子は今も昔も変わらないが、この期に及んで、一人称までリュードとまるっきり同じだ。
だが、両手を合わせてこねくりまわし、うねうねと足を動かす様子は、見ていると苛々してくる。
うっとおしい。
「……殴っても良いか」
「あはは、殺すよ」
俺は半分冗談のつもりで言ったのだが、そう答えるクリムソンの目は笑ってはいない。
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