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「何故こいつがここにいる」
「アンタに答える理由ある?」
間髪入れずに、リーガルではなくクリムソンが返す。質問を受けた当の本人は、狼狽えた様子で俺とクリムソンの顔を見比べていた。
理由は答えたくないが、クリムソンは幼少のリーガルと行動を共にしたいらしかった。
先に“リーガル”を殺しておけば後の未来も変わることを期待していた俺は、案をひとつ潰す。
正直な所、クリムソンだけは敵に回したくはない。
チェルシーを助けた“恩人”とやらがこいつでない以上、早いところ、リーガルの存在を絶っておくべきなのだが。
「ところでさぁ、それなんなの?」
煩わしい空気を打ち払うかのように、クリムソンが努めて明るく言った。
ついと顎を向けたその先は、俺の腰元。
普段魔導書を結びつけている腰元のベルトには、今は革にくるんだ荷物が結わえてあった。
……荷物、というよりも、こちらも魔導書。
返り血や水が浸食しないよう、蝋を塗った鞣し革に厳重に包んでいるこの書物は、イストルランドでチェルシーの部屋から持ち出してきた、あの書物だった。
赤の書、“デラシネ”。
先程まで海水に浸っていた事を思い出し、急いで濡れた革に指を這わせた。
念には念を入れた事が効を奏し、濡れていたのは表の革だけだった。
「違う違う、そっちじゃなくて」
と、ジェイは指を再び俺の腰元へと向ける。
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