第14章【残虐なる正義・静謐なる旋律】

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霧が出たら、家の外には出ない。 ヒューゴおじさんと交わした約束を思い出す。 森に霧が出ている時は、近くに誰かがいる時で、その誰かっていうのは、私達に悪いことをしようとしているから。 私は、何があっても霧の時には外に出ちゃいけない。 「外から来るのは悪い人、外から来るのは……」 ヒューゴおじさんが毎日言っているその言葉を繰り返しながら、私は窓に顔を寄せて、さっきまでとはうってかわって白く濁ってしまった外の景色を眺めた。 1度霧が出てしまったら、しばらくはこのままだ。きっと今日は、夜までこの湿っぽい天気が続くんだろう。 「……あ、どうしよう」 さっき外に干した洗濯物。 この霧のせいで、洗濯物は全部生乾きになってしまうだろう。 ずっと晴れだと思っていたから、あるもの全部洗ってしまった。 明日までこのままなら、明日の着替えがなくなってしまう。 「……明日の服だけ……」 これまでだって、霧が出ていても、誰かがここに来ることはなかった。 ヒューゴおじさんの魔法は強いから、絶対に誰も寄せ付けない。 ほんのちょっと、 明日の着替えを取り込むくらいなら。
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