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静まり返った部屋で桔梗はハッと我に返り
沖田は2人をすぐに引き剥がした。
「あ、あの...顔を洗ってきます!!」
頬を少し赤らめ土方から逃げるように
桔梗は部屋を飛び出した。
そしてその場に残ったのは般若の形相で土方を睨む沖田と口元を抑え俯く土方だけとなった。
「...何故下を向いてるんですか?」
「...なんでもねぇ」
「ふーん...じゃあ顔見せてくださいよ」
そう言って沖田が土方に寄ると土方は下を向いたまま後退りした。それが気に食わなかった沖田は土方の手を無理矢理口元から引き剥がした
。
「ば...ッかやろう。見るんじゃねぇッ...」
「何ですか...その顔。スケコマシの癖に。慣れてるくせに。頬なんか赤らめていい歳して本当に気持ち悪いですね。桔梗さんと接吻する為にわざと引っ張ったんでしょう?この獣が。」
「あぁ”?!元はと言えばてめぇが引っ張ったんだろうがこの糞ガキがッ。生意気言ってんじゃねえぞ」
沖田が息継ぎせずに罵ると先程頬を赤らめていた美男子はすぐにいつもの鬼へと変化した。
「...この事を近藤さんや山南さんにも言ってやりますからね。あぁ...大坂へ誰かさんが来ないのは本当に良かったです。僕の桔梗さんがこれ以上汚されては危うく首を飛ばしそうになりますからね?」
「何が僕の桔梗さんだ?おらッささっと出てけ。」
「はいはい。出ていきますよ。同じ空気を吸いたくないですからね。僕までこんな人になります。大坂では桔梗さんと健全に旅を楽しむので土方さんはそのへんの遊女で性欲を満たしてくださいね。では」
虫を払うかのように手を振り追い出そうとする土方に沖田はニコニコと嫌味を垂れると漸く腰を上げて部屋を出ていった。
「あいつ...柔けぇ唇だな...」
一人になった土方は重い息を吐き先程のことを思い出し独り言を零した。その瞬間襖が勢いよく開き先程出ていった沖田が入ってきた。
「何思い出してんですか。死ねばいいのに。」
「てめぇっッ出ていったんじゃねえのか?」
「いや~こんな事を言うんではないかと思いまして。本当に死ねばいいのに」
沖田はそう言うと襖を勢いよく閉めて今度こそその場を立ち去った。
歩いている後ろから「総司ッ」と土方が怒鳴っている声が聞こえたのは言うまでもない。
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