第26章

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 団地の崩壊現場には今も警察と消防の関係者が詰めている。 結局5号棟は六階から二階が崩壊、消失。6号棟は六、五階が崩壊、四階は一部にひびがはいっているがなんとか生活はできる。7号棟は、一、二階は残ったが、崩れた部分の重みでいつ崩壊してもおかしくないので全面的に取り壊されることとなった。 住民たちは崩れた瓦礫の下から使えそうな家財を拾い出している。 けが人は多少出たが、死亡者は幸い、と言うか、子供がI人きりだった。  307号室の岡本千朗―――  夏月と景斗は復旧工事に取り組んでいる団地の前に立っていた。 「新聞には土台の老朽化と欠陥施工って書いてありましたね」 「セメントに問題があっだのは事実らしいよ。実際この団地は建ってから三十年は経過しているし、大きな地震があったら危なかったかもしれない」 「ってことは千朗の力ってのは大きな地震くらいはあったんですね」 「ああ………」  大きな地震。地震が自然による破壊のエネルギーなのだとしたら、千朗のエネルギーはどこから来ているものなのだろうか。あの小さな身体の中に、こんな大きな建造物を破壊するくらいの力が潜んでいたとは思えない。  超力はどこから来るのだろう。  思念によるものだとしたら脳からだろうか。  景斗は自分の力の謎が知りたくて、その手の本もたくさん読んだ。だから人の脳についてはごく普通の高校生よりは知っている。  人間が使っている脳は『大脳』と呼ばれている部分。それも大脳の表面を覆っている二・五から三ミリくらいの厚さの表面でしかない。 わずか三ミリで人間の全てが決まってしまう。人格も知能も能力も。
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