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「もう俺は受け入れたんだ。俺は小湊よりも早く生まれたから、受け入れる方法を知っていた」
今まで嫌いで仕方なかったその声に、私は初めて耳を傾ける。ひどく静かで、何よりも優しい響きを持っていた。
「それに今さら。兄になろうなんて足掻いてる姿を見せたくないだろ? カッコ悪い」
兄の手が伸びてきたかと思うと、頭を乱暴な手つきで撫でられる。温かい、骨ばった手はぎこちなくも、私の存在を認めてくれた。
私は、ずっと兄のことも栗色のことも目を逸らしていた。
紅茶を飲んだときのような幸せが胸に広がっていく。
照れたように不器用に口角を上げて笑って見せた兄は、記憶よりもずっと大人びて見えた。
泣いて水分を放出して、喉が乾いた。オレンジジュースはすっかり氷が溶けてしまっている。それでも一気に飲み干せば、満たされていくようで胸がいっぱいになった。
「話が逸れたけど、本題に戻ろうか。空木 越について」
椅子に座り直した兄が次に口を開いたのは喧嘩の原因となったことだった。
緊張が走り、自然と背筋が延びる。喉の乾きを覚えてコップに手を伸ばすが、今飲み干したばかりだったと引っ込めた。
「俺の知る限りの話を小湊にするから、その上でどうするか自分で考えてほしい」
「わかった」
「栗色にも関わってくる話だ」
どうして栗色が──、そうか。胡散臭い文房具屋の話をしたのは栗色だった。けれど、兄の口から続いた言葉は、まるで想像していなかったもので、私を混乱させるには十分すぎるほどの威力を持っていた。
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