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《なぁ、親友クン。この先の現実がどうも胡散臭いと感じたら、もっと胡散臭い文房具屋を見つけて現実を売るんだ》
自殺した友人の言葉が脳裏に浮かぶ。それは、彼女が亡くなる六日前に彼女から私に贈られた誕生日プレゼント。
《そうしたら、売った現実で新しい時間を買うんだよ》
不格好に包装されたその言葉は、意味を知ることなく投げ渡されたまま、四年間放置していた。
「胡散臭い文房具屋」
口に出しても、変な言葉だ。胡散臭い文房具屋なんて思い付かない。
「そういえば」
途中、調子の悪そうなエンジン音を轟かせている白いおんぼろ軽トラックを見かけたことを思い出す。荷台には大量のコピー用紙の束や事務椅子、勉強机が乗せられていた。てっきり廃品回収車だと思っていたが、それにしては新しい品ばかりを運んでいたような気がして気にかかる。もしかしたら配達途中の文房具屋の車だったのかもしれない。突然友人の言葉を思い出し、偶然文房具屋を見つけられたとしたら。ほんの少し胸の高鳴りを感じて、居てもたってもいられなくなった私は歩道に向かって飛び降りていた。
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