第1章

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 でも、よくよく考えればまた文房具屋(仮)を見つけられる保証はないのだ。橋を渡りきったところで、はたと気づいてしまった。そもそも文房具屋である確証もない。心が萎んでいく。目の前で、欲しかったゲームが売り切れた時のような途方のない気持ちになった。俯いて、コンクリートを眺める。  今にも止まりそうなくらい、調子の悪そうなエンジン音が耳に入ってきたのは踵をかえそうと右足を引いた時だった。がたごとがたごとと荷台に乗せた荷物を揺らしながら走ってきた軽トラックは、橋を渡りきった先にある信号に引っかかり停車をする。  なんてタイミング!  慌てて軽トラックの特長を掴む。そして、バックに貼ってあるステッカーを見て確信した。胡散臭い。面白いくらい、胡散臭さを全面に出したステッカーだった。思わず笑いが溢れてしまったところで、信号が変わり、軽トラックは今にも止まりそうなエンジン音を轟かせながら走りだした。
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