第2章

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「距離を、置きたくて。……小湊を見ると、確かに栗色を思い出す。恋しくなって、過去に戻りたい衝動にかられる」  兄は栗色の死を悔やんでいると言った。いくら役目を全うしたからといって、死を肯定するのは難しい。兄も受け止めきれない部分があったのだ。 「そんな、栗色にすがる自分と距離を置きたかったんだ」  兄の声は震えていた。でも、目線を逸らすことなく、まっすぐに私を見てくれている。それがとてもむず痒く感じた。真っ正面から受け止めるのは気恥ずかしい。 「栗色が救いたかった世界と俺の役目を、俺が傷つけるわけにはいかないから」  私は。  兄のことも、栗色のことも考えずに二人をヒーローに仕立てあげてしまった。相手の気持ちも考えずにただ、凄いと持ち上げて。自分とは違うと境界線を引いて。必要以上に深いところまで入ってこないように、彼らを否定していた。  兄も、栗色が居なくなって悲しくないわけがなかったのに。  どんな役目だって、死んでしまうことに納得できるはずがないのに。兄は兄で居てくれようとした。 「一旦、気持ちの整理をしたかった」  涙が、堰止められない。視界が歪む。ぼやけて何も見えなくなる。 「ごめっ、ごめん、なさい。私ばっか。私は、お兄ちゃんに何もしてあげられないのに。妹なんて」  私は泣いてばかりだ。泣くこと出来ない。なんて狡いやつなんだろう。
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