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「甘鳥 栗色は空木 越に殺された」
「え──」
衝撃。それは頭を鈍器で殴られたように容赦がなかった。うまく思考が出来なくなる。目の前が暗くなった。なんで、どうして。何も話が繋がらない。ただ、手が震えている。兄の目を見るのが怖い。きっと彼は私を真っ直ぐ見据えて話をしているだろう。そんな姿を見たら、真実としか思えなくなってしまう。嘘だと言ってほしい。だから、私は震える拳に視線を落とした。
「うそ」
「本当だ」
「う、空木さんと栗色はどんな関係があるっていうの。ただの文房具屋と、そのお客さんぐらいじゃ」
「兄妹なんだよ。父親違いの」
兄妹? 栗色と、空木さんが?
──友人について、どこまで知ってるんですか。
──いろんなことを知っているよ。
初めて摩訶不思議文房具店を訪れた時の会話が蘇る。そんな、範囲が広すぎると思っていたけど。
「どうして、栗色を殺す必要が」
「そこまでは……俺も知らない」
そんな、無責任な。
「じゃあどうして兄さんは空木さんが栗色を殺したなんて言えるの」
理由を知らないのなら空木さんが本当に栗色を殺したのかもわからないはずなのに。
「空木本人に聞いて、栗色の遺書も預かった。確かに栗色の字だった」
血の気が引いて、思考が停止する。まるで熱中症にかかったみたいにめまいがして、くらくらする。
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