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「正確に言えば、栗色は空木に自殺するよう指示されて死んだ。でも、それって空木が殺したのと変わらないだろ」
「うそだよ」
壊れたロボットのように言葉を繰り返す。
うそ、と呟く度に真実なのだと受け入れていく自分がいる。否定してほしいのに、兄は口を挟まない。
「なんで」
兄は首を振るばかりだ。
「だが、紛れもない事実なんだ。俺はどうやって栗色を自殺に追い込んだのかは知らない。空木が小湊に接触していることを知ったとき、今度は小湊に被害が及ぶかもしれないと思った。もう、何も知らないまま手放したくないんだよ」
だから、頑なに関係ないと突っぱねていたんだ。兄は確証のない情報を流すことを嫌う。そんな兄が話をしてくれた。
胸が張り裂けそう。理解が追いつかなくて、頭だって破裂寸前だ。
「小湊の事情も考えずに、ごめん。こんなこと、話しても気分が悪いだろ」
首を振る。私も兄の事情を考えずに否定ばかりしていた。ただを捏ねている子供のように。私のときは止まったままだ。四年前から成長出来ていなかった。
「……空木は栗色との約束を守り続けて、小湊にプレゼントを渡した。志井から聞いたとき、その約束は空木の中で重要なことなんだと俺は思った」
「志井君」
そうだ。志井君は空木さんが栗色に頼まれて作られた、私の誕生日プレゼント。目が醒めるようなかかっていた靄が晴れていくような、錯覚。
志井君なら何かを知っているはずなのだ。大抵のことはシャーペンが答えられると空木さんは言っていた。
「志井君は何を知っているの? 栗色はどうして、」
空木さんに殺されなければならなかったのか。まだ、決めつけたくない。喉元まででかかった言葉を飲み込む。
『本当に知ってしまってもいいんでしょうか』
それは、無機質な声だった。機械だからこそ、人間のように振る舞おうとしていた彼の声が酷く冷えている。触れてはいけないことに触れてしまったのだと、志井君へと伸びていた手が止まった。
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