第1章

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「大倉先輩が参加するって言い張っているし、ここは奈良井先輩にも参加してもらおうか」  桜太は丁度いい生贄が手に入ったと笑う。奈良井芳樹は亜塔と付き合いが長い。しかも誰もが忘れているが副部長だ。被害が後輩に向く前に何とかしてくれるだろう。しかも芳樹はアマガエルを愛する変人だが真っ当な人物だ。戦力にもなる。 「それなら中沢先輩も巻き込みましょうよ。何だか仲間はずれみたいになるし」  千晴がすかさず提案する。科学部の変人の中でも一番まともなのがこの中沢莉音だ。迷走気味のこの件も何とかしてくれるのではと期待してしまう。しかも莉音は千晴の好みのタイプだった。怖がる振りして近づくチャンスもある。 「そうだな。そもそもこの七不思議解明に乗り出す羽目になったのは彼らが残した負の遺産のせいでもある。ちょっとくらい責任を取ってもらってもいいだろう」  都合よく事実を捻じ曲げた桜太が言い切る。部長になって改善策を何も出さなかったとの突っ込みは受け付けないつもりだ。 「よし。それじゃあ先輩たちに声を掛けるとして、調査順序を決めないと。図書室も含めて北館に集中しているよな」  誰からも反論が出なかったところで桜太が進める。 「そうだな。そこは怪談らしくじめっとした場所に集まるんだ」  迅がうんうんと頷く。亜塔と妙な意気投合をしていたとは思えない発言だ。 「そうなると、場所が不明なのが井戸か。それと見てはいけない笑顔。誰の笑顔か不明だ」  楓翔は言いながら首を捻る。どうにも井戸というのが引っ掛かるところだ。水脈でもあるのだろうか。地質を愛する楓翔は気になってしかたない。亜塔の前では興味ない振りをしていたが、調べたくてうずうずしていた。 「笑顔は見たらアウトなんだろ。っていうか七不思議か?」  優我は今更ながら突っ込む。 「いいんじゃない。それに一日でこれだけ集まったんだから、それが不明でも何か代わりは見つかるでしょ。明日先輩に声を掛けるんだし、大倉先輩に井戸まで案内してもらうところから調査開始でいいんじゃない」  なぜか千晴がまとめる。しかし全員そこは気にせずに賛同した。
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