第1章

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翌日。まずは調べる怪談を集めようとそれぞれが聞き込みを開始していた。 「なあ。この学校の怪談話って知らないか?」  桜太がまず目を付けたのはクラスで仲のいい藤代悠磨だった。昼休みに教室で弁当を食べながら訊く。 「怪談話?いきなりどうしたんだ?まさか妖怪を捕まえてブラックホールに投げ込む気か?」  ただでさえ世間一般からずれている桜太を相手しているだけに、悠磨の思考も捩れていた。さらには桜太に会せるために完全にブラックホールに繋げようと無理をした形跡がある。  その悠磨は理系クラスに在籍しているものの、普通の高校生だ。悠磨としては眼鏡を掛けて真面目系だが、絶対に科学部と同類とは思われたくない。 「いや、それは無理だろ。そもそも妖怪が存在しない。そうじゃなくて、科学部を存続させるために何か成果が欲しいんだよ。そこで科学の力で身近な謎を解明しようっていうわけだ」  もぐもぐとメンチカツを頬張りながら桜太は説明する。 「ふうん。一応は部活っぽいことをするんだ」  何だ、予想外に普通の理由だな。と悠磨は拍子抜けしてしまった。科学部が怪談について調べるなんて思いもしなかった。  悠磨からすると科学部は帰宅部より怠惰な連中だと思っている。自分の好きなことをするのに家に帰る時間すら惜しく、化学教室に巣食っているのだと思っていた。 「部活である以上は何かしないとね。まったく前部長の大倉先輩が今のような変な部活にしちゃったせいで大変だよ。今や放課後学習と変わらない。これでは科学部ですと名乗っても誰も納得してくれないと気づいたわけだ」  まさしく悠磨の想像どおりの説明をする桜太に、悠磨は危うく箸で掴んだ卵焼きをどこかに飛ばしそうだった。本当に部活をしていなかったとは驚きである。 「そこで。このままでは廃部になりかねない科学部を救うため、活動するわけだよ。何とか目立たないとと思って身の回りの不思議を解明したいんだ。なあ、なんかこの学校で気になることってないか?」
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