第1章

3/10
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
 すでに怪談から逸れている問いを発する桜太だ。しかし桜太の中で学校の怪談はイメージ出来ていない。小学校ならばトイレの花子さんがあるだろうが、それは科学で解明できるか謎である。 「気になってることねえ。何でもいいのか?」  解決してくれるならばいいかと悠磨は情報提供する気になった。ようやく卵焼きも口の中に納まる。 「おっ。何?」  期待に目を輝かせて桜太は答えを待つ。やはり持つべきは友。 「この学校の図書室さ、どういうわけかある数か所の本棚で本が落ちるんだよ。本棚が傾いているのかと調べてみたがそうではないらしい。それもそのはずで、落ちるのは本棚の本総てではなく、本棚の中では一か所だけ。変だろ?」  図書委員の悠磨には深刻な悩みだった。毎日本を片付ける作業は発生するし、落下するせいで本が傷む。しかしどうにも解らなくて自力解決を諦めていたところである。 「オッケー。今度調査させてくれ」  これは怪談ではない。と突っ込んでくれる人がいるはずもなく、桜太はあっさりとこれを学園七不思議に加えてしまっていた。  同じ頃。変わった話を聴き出すならこの人だろうと、楓翔と迅は問題の前部長である大倉亜塔の元を訪れていた。なぜか亜塔は昼休みだというのに化学教室の横にある生物教室にいた。そこで一人楽しそうに弁当を食べていたのだから謎過ぎる。  見た目は科学部お決まりの眼鏡に真面目な雰囲気である。顔立ちは整っているので口を開かなければ女子にもてるだろう。しかし誰もが記憶を抹消するほどの変なものを愛好している。つまり彼女はいないのだ。 「何?学園七不思議を調査。お前ら、この俺を差し置いてそんな羨ましいことをするのか?」  すでに一般人からずれた発言をする亜塔は箸を持ったまま額を押さえた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!