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「新入生獲得のための下地作りですよ。大倉先輩だって科学部を存続させたいんでしょ?何とか七不思議を集めたいんです。協力してください」
同じ科学部でもこの人はやっぱり無理だなと思いつつも楓翔は説得する。実は今年の新入生ゼロはこの人が原因なのではと楓翔はずっと疑っている。なので出来れば関わってほしくない。それに亜塔に引き継ぎしたその前の部長は何を考えていたのだろうか。他の三年生はまともだったのだからそちらに部長を頼めばいいのにと思う。亜塔が部長だったことこそ謎だ。科学部としてはこちらを解明したいくらいである。
「それ。その謎解きには俺も参加していいんだよな」
どうしても諦められない亜塔はずいっと楓翔と迅に顔を近づけた。その目は真剣そのもので怖い。
「――はい」
その迫力に負けた二人は頷くしかなかった。悲しいことに情報を貰うどころかトラブルを背負い込んでいる。
「よしよし。実はさ、前から気になっていることがあるんだよね」
満足した亜塔は顔を離すと切り出した。これで高校三年間気になって仕方なかったことを自分で調べられる。
「気になることですか?」
すでに怪談からずれるなと、楓翔は暗い気分になった。
「そう。この学校、謎の井戸があるんだよね。しかも結構古い感じの。別に創立100年とかいう古い学校じゃないのに妙だろ?」
亜塔が目を輝かせて語る。
「井戸?」
そんなものあったっけと迅と楓翔は顔を見合わせた。二年生にもなれば大体のことはもう解っている。それなのに聞いたことも見たこともない井戸があるというのだ。
楓翔は地質調査失敗の原因になった学園長の話を思い返してみたが、やはり井戸なんて出てこなかった。
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