第1章

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「創立27年よ。怪談でしょ。知ってるよ」  あっさり創立からの年数を言った穂波はこれまたあっさりと知っていると断言した。 「うそ。なになに?」  やはり穂波に目を付けて正解と千晴はこっそりガッツポーズした。さすがは生き字引だ。 「どれもありきたりだよ。私も何か怪談ってないかなって探したんだよね」  同士が現れたと穂波はにんまりする。 「へ、へえ。そうなんだ」  勘違いされたなと気づいた千晴は僅かに引いた。そもそも大人しそうに見えて意外と行動派とは驚きだ。しかも自主的にそんなものを調べようとするとは変わっている。 「でね、一応三つは見つかったの。その内二つは北館のもの」  聞きたいと窺うように穂波はそこで言葉を切る。 「北館で?というか、できれば三つとも教えて」  逃がすまじと千晴は穂波の手を握って頼み込む。 「いいわよ。その代り他に見つかったら教えてね」 「う、うん」  そんなに知りたいのかと千晴は再び引いた。どうやら穂波は怪談が好きなようだ。 「まずは北館の二階のトイレ。ここですすり泣く声がするって噂されてるの。でも決まった時間に聴こえるわけじゃないみたいで、何度か行ってみたけど聴こえなかった」  さも残念と穂波は語る。 「北館の二階?」  千晴はすすり泣きより場所が気になった。まさかそのトイレは化学教室の横にあるものだろうか。だとすればちょっと嫌である。 「で、二つ目は音楽教室よ。あそこの肖像画。どういうわけか総ての絵と一気に目が合うのよ。これは試してみたわ。気持ち悪いよ」  穂波は怖かったと肩を抱いて震えた。そういう話が好きなくせに、実際に体験すると怖いものなのかと千晴は不思議である。しかもそう簡単に確認できるのならば解明も簡単だろう。目が合うというヒントからすでに可能性は絞られている。
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