第1章

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「で、三つめは怪談かどうか解らないのよね。学園長像が動くっていう噂はあるんだけど」  千晴の冷めた目線など気にせず、穂波は三つめまでを語った。しかも学園長像はがっかりという雰囲気も出す。 「動くねえ」  たしかに千晴にも何のことか解らない。普通夜中に動いたとか何か情報がありそうなものだ。しかも動くといえば二宮金次郎ではないのか。まあ、この学校にはないけれど。 「そう。でも何人かは動いたところを見たことがあるらしいのよ。気になるのよね」  穂波は困ったという顔になる。こうしてここでも怪談かどうか怪しいものを拾っている科学部だった。 「ふふふっ。人に聞くまでもなく謎が一つあるんだよな」  放課後。学園七不思議を黒板に書き出していた科学部メンバーは、松崎の情報を入れても六つしかないと悩んでいた。そこに遅れてきた優我が笑ってこの言葉を言ったのである。 「どういうことだ?」  チョークを投げつけたい衝動に駆られながら桜太は訊く。知っているなら昨日の段階で言っておいてほしいものだ。しかも怪異現象を科学で解明と言い出したのは優我である。もう少し積極的になるべきだ。 「ここの化学教室だよ。夜に謎の光を目撃したとの話がある」  勢いよく言い放った優我に、他のメンバーはきょとんとした。 「えっ?ここ?」  二年生になっても知らないこと再び。まさか身近で怪異現象が起きていたのだ。代表して桜太が訊く。 「そう、ここ。その昔、大真面目にここで実験していた科学部員が目撃したということだ。因みに情報源は奈良井先輩だ」  いや、結局は人から聞いているだろと全員が心の中で突っ込む。しかし問題はそこではない。情報源が何と引退した三年生なのだ。
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