24人が本棚に入れています
本棚に追加
夜の帳も降りた八王子の曲輪内には、今日の為に設えられた能舞台の周りに幾台もの篝火が焚かれ火の粉を虚空に舞わせている。
その脇には曲を奏でる囃子方が居並び、貌を火明かりに映し出されていた。
演目が始まり囃子方の持つ笛の音、鼓の音が鳴り響く。それに身を預けるかのようにシテと呼ばれる主役がふわりと現れた。
舞台の対に設えてある観覧席には侍烏帽子に直垂姿で正装した幾人かの重臣たちが居並び、その中央には小姓に酒を注がれながら能を楽しむ氏照の姿がある。
最初のコメントを投稿しよう!