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天正五年に築城を始めた八王子の城。
それは天正十八年の春になっても未だ普請中ではあったが、連日打ち続く北関東出兵の為に疲弊した家臣達の慰労のため、それと明朝、上方の軍勢と戦うために小田原城へ向かう氏照自身のために催された薪能は、娯楽の少ないこの時期には好評を博していた。
舞台の設えてある曲輪では城主である氏照や重臣達の座する席とは別に、舞台周辺を四方に開け放ち立ち見の席も造られている。
このため身分の軽い足軽等はそこを所狭しと埋め、舞が進むにつれて観客達は声も無く見入っていた。
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