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私の友達、“颯梨”は人より少し変わっている。
いや、人よりも早く変化していると言った方が的確か。
「“有美”、お待たせ」
名を呼ばれたので振り向くと、高級感溢れる毛皮のコートを着たセレブリティー溢れる女性がサングラスの奥から私を見ていた。
「わあ颯梨、すっごく大人っぽくてイケてんじゃーん」
「いいでしょ。エレガントなセレブをイメージしたセレカジ系が今年のトレンドなの」
彼女は非常に流行に敏感で、常に最先端のファッションを追い求め続けてます。当然コートもバックもヒールも全てブランド品だし、つけてる香水も海外から取り寄せてる特注品らしい。
「ホント颯梨は自分を着飾る事には努力を惜しまないよねー。大雑把な私には真似できないよー」
「え? 全然普通よ。やっぱり現代社会に生きる一般ピーポーとしては、恥ずかしくない身嗜みでいたいし」
「でもほら、流行ってコロコロ変わっちゃうじゃん。やっと流れに乗ってもいつの間にか次の流れに乗り遅れちゃったりするんだよねー」
そう。流行とは四季の如く目まぐるしく常に移り変わるもの。流行っては廃れを繰り返し、人の追求心が尽きない限り決して終わりを迎える事はない。
私としては人の真似などしたくないし、自分の個性を大事にしたい派だ。
しかし颯梨は個性を持つのが嫌なのか、まるで流れの中に溶け込むかのように着実に変化を遂げていった。
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