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「今の関係からじゃ信じてもらえないかもしれないけれど、百合の真似事を始めたのは、華の方からなの。
ルームシェアだってそう。
『これでなっこを守れるなら』って」
「男よけのための、演技なのか」
「私も華も、性癖はごくごく普通よ。
でも、面白いわね、男って。
私と華が相思相愛の恋人みたいに振る舞うだけで、面白いくらい言い寄ってくる男が減ったわ」
そりゃあ、あんなのを目の前で見せられたら……ねぇ、と、僕は胸の内だけで呟く。
華さんがあんな風に暁に迫ることがあったのか? と想像してみたが、まったくイメージが湧かなかった。
「私達が同じ会社に入社したのはたまたまだけど……華は、秘書課配属になった私を、ずっと心配していたわ。
ほら、自分の地位が高ければ何をしても許されると勘違いしているバカがいるじゃない?」
「そういう輩を、華さんがあんな感じて狩っている、と?」
「我が課のボス……私の上司も承知の話よ。
お陰で最近は秘書課全体での被害も減っているの。
みんな華には感謝しているわ」
「だけどそれは、華さんを危険な目にあわせていい理由にはならないとも分かっているよな?
華さんが一身に先方の恨みを買う場合だってあるんだ。
そのあたりの対策はきちんとできているんだろうな?」
「華のあの強さを見たでしょう?
それでもあなたはそんな心配をするの?」
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