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暁は優雅に小首を傾げてみせた。
絶対安全圏にいるからこそ浮かべられる、優雅な笑み。
「いくら強かろうとも、華さんは女性だぞっ!!
視線恐怖症という弱点だってある。
合気道の腕が立つからと言って、危険な場所に立たせていい子じゃないっ!!」
再びはらわたが煮えくりかえるような怒りを感じた。
これは間違いなく、怒りだ。
華さんを危険な場所に立たせているくせに、自分は安全地帯でぬくぬくと笑っていられる彼女に対する、猛烈な怒り。
「君は華さんの友人なんだろっ!?
華さんの優しさにかこつけて、華さんを危険な場所に立たせて何とも思わないのかっ!?」
「あなたは、華の強さを見てどう思ったの?
力づくでどうこうできなさそうで、残念?」
「はぁっ!?」
だというのに目の前に座る暁は、妙に冷めた顔で僕のことを見つめていた。
真っ直ぐに据えられた瞳から、彼女の心の内を見透かすことはできない。
「力づくでどうこうしたって、気持ちは伝わらないだろ。
そんなことをしても、華さんを傷付けるだけだ。
どうして華さんを傷付けるような真似をしなくちゃいけないんだ?」
美人だと評判高くて、瞳の放つ力も強い。
だけど、どうして僕は、その瞳を美しいとは思えないのだろう。
「僕は、華さんを傷つけたくはない。
どうこうしようなんて、思ったこともない。
華さんに、僕を好きになってもらいたいから」
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